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最も重い罪悪感

先週金曜日の毎日新聞夕刊、特集ワイド『この国はどこへ行こうとしているのか』のサブタイトルは『吉本隆明と死』だった。もう82歳という高齢でおられるし、十年ほど前には水難事故に遭われ危ういところだったので洒落にならないのだが(笑)、氏の語る内容もいささか痛々しいものだった。

「最も重い罪悪感はペンで友人、身内を精神的に殺してきたこと」
戦後思想界の巨人として長きに渡り活躍してこられた氏(私より若い方には吉本ばななの父上という認識の方が強いかもしれない)の言葉であるだけに重みがある。友人、身内を精神的に殺す...程度の差こそあれ、我々凡俗にも思い当たることの一つや二つ、十や二十はあろう。

以下、主なご発言を抜粋させて頂く。

「僕の場合、戦争で兄貴も学校の先生も友達も死んでますから、僕ら(20歳前後で敗戦を迎えた)戦中派は『死の世代』という感じがある。でも、僕は死に匹敵するほど書いてきたのか。できていないと思いますね」

「6年くらい前、僕のめい、つまり兄の娘が子宮がんで亡くなる前に見舞いにいったんです。めいは自分の置かれた状況の意味について聞くんです。彼女は自分が長くはないと知っていたんです。だけど僕は全く答えられなかった。黙ってうつむいちゃった。そのとき僕は『ああ、おれの書いているモノは下らないんだよ。こういうことに答えられないんだから。そういうのは意味がないんだ』と、反省したんですよ」

「仲のいい友達の奥さんを僕は、まあとっちまって結婚したから。その友達は一生、変わっちまったわけだし。それを公に告白したら、詩人の谷川俊太郎が『恋の勝者の告白だな』って言ったんです。『その人を一生、精神的に狂わしたと言えるんだよ』って。僕が人を傷つけたということを考えるとき、これが絶えず最初に来ます」

「おやじが事業に失敗して九州から東京に出てきたときも助けられなかった。おやじは船大工になったけど、借金でもう故郷に帰れない。数百万円くらい僕が出せれば、金は返せたんだろうけど。もうかる商売をやってたら救えたのに、と。これも殺したって感覚、ありますね」

「ベッドに寝てる僕の首をおやじが絞めるんです。僕は『おれ、何かわるいことしたかよ』って弁解しているのに、おやじは何も言わずに首を絞める。一度も故郷に帰せなかったのが、ひっかかっているんだと思ってね。それと、全然、顔のわからない女の人がベッドの脇に立っているんです。『どなたですか』って聞く自分の声で目覚めるんです」

「めいが死んでから一生懸命、死について考えてきましたが、まだまだ、何も答えられない。でも、いつか必ず、そういう身になりてえもんだって。で、がんばりゃ、なれるって気もするんです」

吉本さんほどの方ですら、身の毛もよだつ悪夢に苛まれ、肉親の死について語る言葉を探し求め、今もなお苦闘している...私は涙が滲む思いがした。悟り澄ました宗教家や作家、「とりあえずリベラリストです」といった類いの知識人を私は好まぬが、吉本さんはその対極にある。

80年代後半以降、私は吉本さんのお考えから離れた地点に来てしまったように思うが、
「自分や身内のひとりも救えないのに何が国家論だ」
という気持ち、戒めは常に心の何処かに持っている。我々は「公」を大音声で語る前に、容易には逃れ難い「私」の領域と葛藤しながら日々生きている。そのことを忘れて「奇麗事」の世界を構築してはならないのだろう。

ちなみに、吉本さんの書斎には女性モデルのヌードカレンダーが貼ってあったらしい。目が悪くなったのでよく見えないと言い訳されていたのが「萌え」である(笑)
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